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財産分与に関する令和6年民法改正について

山下江法律事務所

目次

財産分与に関する令和6年民法改正について

 令和6年に民法が改正され、財産分与についていくつかの重要な制度変更が定められました。
 改正法の施行時期は、公布から2年以内とされており、現時点ではまだ施行されていませんが、このコラムでは、まず財産分与の基本的事項について説明したうえで、今回の民法改正によりどのような制度変更が行われたのかについてご紹介します。

財産分与とは

 財産分与とは、夫婦が共同生活する中で協力して築いた財産を、離婚する際、公平に分配、清算することをいいます。
 夫婦の一方が婚姻前から有していた財産は、その人の財産とされるほか、婚姻後に自己の名義で取得した財産もその人の財産とされています。これを夫婦別産制といい、夫婦間の財産関係の原則です。
 もっとも、例えば夫が外で働き、妻が専業主婦として家庭内の家事をしている夫婦の場合、夫の給与から蓄えた預貯金をすべて夫のみの財産であるとすると、離婚時に妻には何の権利もないことになり、不公平であることは明らかでしょう。
 そこで、婚姻中に形成された財産は、夫婦の協力により築かれたものなのだから実質的には夫婦の共有財産であるとされ、夫婦間の公平を図るため離婚時には財産分与の対象になると考えられています。
 つまり、離婚時の財産分与を考える上では、夫婦どちらの名義になっているかにかかわらず、婚姻中に形成された財産は財産分与の対象になる、ということです。

財産分与の種類

 財産分与は、清算的財産分与、扶養的財産分与、慰謝料的財産分与の3つに分けることができます。
 清算的財産分与は、夫婦が婚姻中に取得した財産を離婚の際に分配することをいい、財産分与の原則的な考え方であり、財産分与の基本となるものです。
 扶養的財産分与とは、年齢や健康状態、子育てや介護など、当事者の事情により離婚後の生活に困窮することが予想される場合に、その当事者が経済的に自立できるまでの間の生活費を補助するために行われる財産分与をいいます。
 夫婦は離婚すれば互いに扶養義務はなくなるため、本来は必要のないものですが、ケースによっては一定の財産の分与を認めることが夫婦間の公平に資するという考え方によるものです。もっとも、扶養的財産分与はごく例外的なものであり、実務上はあまり行われていません。
 慰謝料的財産分与は、不貞行為や浪費など離婚原因を作ってしまった当事者が相手方に対して支払うべき慰謝料を含める形で行われる財産分与をいいます。
 慰謝料と財産分与は本来別物であり、それぞれ別々に算定するのが原則ですが、当事者の協議により慰謝料の意味を含めた財産分与を行うことがあります。
 以上、財産分与には3つの形態がありますが、基本となるのは清算的財産分与です。このコラムも以降は清算的財産分与を前提にご説明します。

財産分与の対象となる財産

 上記のとおり、夫婦の実質的な共有財産の公平な分配という財産分与の趣旨、目的から、財産分与の対象となる財産は、夫婦が婚姻中に取得した財産ということになります。婚姻してから別居あるいは離婚するまでの間に取得した財産であれば、名義が夫婦どちらになっているかは関係なく、原則として財産分与の対象となります。
 反対に、婚姻前から有していた財産や、婚姻期間中のものであっても夫婦生活、協力関係とは関係なく取得した財産は、財産分与の対象とはなりません。
 前者の例としては、学生時代に購入し婚姻前から所有していた自動車などは財産分与の対象外となります。
 後者の例としては、一方の親族が亡くなったことにより相続した財産が挙げられます。例えば、妻の父が亡くなったことにより妻が相続で得た財産は、婚姻関係や夫との協力関係とは無関係で得られた財産であるため、財産分与の対象とはなりません。
 このように財産分与の対象とならない財産を特有財産といいます。 

財産分与に関する民法改正

 以上が財産分与についての基礎知識となります。
 これを踏まえて、令和6年の民法改正により財産分与の制度にどのような変更があったのかについてご紹介していきます。
 今回の民法改正による財産分与の制度に関する主な変更点として

  1. 財産分与請求権の除斥期間の伸長
  2. 考慮要素の明確化
  3. 2分の1ルールの明文化
  4. 情報開示命令

の4つが挙げられます。順番にご説明していきます。 

①財産分与請求権の除斥期間の伸長

 財産分与は、夫婦の実質的な共有財産を離婚する際に公平に分配するというものですが、離婚後いつまでも請求できるものではありません。財産分与を請求できる期間には制限があり(除斥期間といいます。)、これまでは離婚後2年間とされていました。
 今回の民法改正により、離婚後5年間と改められました。これによって、財産分与を請求するための時間的余裕ができることになります。
 ただし、この改正はまだ施行されておらず(令和7年2月時点)、施行前に離婚する場合には適用されないこととされていますので、その場合は従前どおり離婚後2年以内に請求しなければなりません。
 また、離婚後、長期間が経過すると財産分与算定のための資料をなくしてしまったり、財産の評価が難しくなったりするおそれもありますので、できるだけ早い段階で請求するのが望ましいと思われます。

②考慮要素の明確化

 これまでの民法では、「家庭裁判所は、当事者双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮して、分与をさせるべきかどうか並びに分与の額及び方法を定める。」と規定するのみで、財産分与の額や方法を決めるにあたって考慮すべき内容が明記されていませんでした。
 これに対し改正民法では、「家庭裁判所は、当事者双方がその婚姻中に取得し、又は維持した財産の額及びその取得又は維持についての各当事者の寄与の程度、婚姻の期間、婚姻中の生活水準、婚姻中の協力及び扶助の状況、各当事者の年齢、心身の状況、職業及び収入その他一切の事情を考慮して、分与をさせるべきかどうか並びに分与の額及び方法を定める。」とされ、考慮すべき要素や事情など、財産分与を検討するための判断材料が明確にされました。
 考慮要素の中に、年齢や心身の状況、職業や収入が含まれているところを見ると、扶養的財産分与が意識されているようにも考えられます。もっとも、上記のように扶養的財産分与は現在ほとんど利用されておらず、今回の民法改正により採用される例が増えるかどうかについては、今後の家庭裁判所の実務を見守る必要があると思います。

③2分の1ルールの明文化

 ②で紹介した考慮要素に関してもう一つの改正があり、それがいわゆる「2分の1ルール」の明文化です。
 財産分与の考慮要素の一つに「各当事者の寄与の程度」があります。夫婦の共有財産の取得や維持について、夫婦それぞれがどの程度貢献したのかということです。
 この点、改正民法では「婚姻中の財産の取得又は維持についての各当事者の寄与の程度は、その程度が異なることが明らかでないときは、相等しいものとする。」と定めています。
 つまり、財産の取得や維持について、夫婦の寄与度に差があることが明らかで   ない限り同等と考える、すなわち原則として2分の1ずつとするということです。家庭裁判所での実務上、これまでも「2分の1ルール」がとられており、今回の改正はすでに実務上定着しているルールを法律上も明確にしようというものです。
 したがって、財産分与の考え方について、従前と比べて大きな変更をもたらすものではないと考えられます。

④情報開示命令

 財産分与に関する改正の4つ目は情報開示命令です。
 財産分与を検討する際、基準となる日(別居日あるいは離婚日)に夫婦がそれぞれどのような財産をどれだけ有しているかを把握するところから始めることになります。そのためには、双方の財産状況に関する資料を確認する必要があり、預金通帳や残高証明書、不動産評価に関する書類など、さまざまな資料が必要となります。
 そういった資料について、これまでは基本的に当事者の任意提出に委ねられており、任意提出に応じない場合には裁判所の調査嘱託等で対応しなければなりませんでした。
 今回の改正で、調停、審判あるいは訴訟手続きの中で、必要がある場合には家庭裁判所が当事者に対し、その財産の状況に関する情報を開示するよう命令できるようになりました。
 なお、この情報開示命令は、財産分与だけでなく養育費や婚姻費用の請求の場面でも適用されるものです。 そして、この情報開示命令が発せられたにもかかわらず、正当な理由なく開示を拒んだり、虚偽の情報を開示したときには、10万円以下の過料というペナルティが与えられることになっています。
 この情報開示命令が新設されたことにより、これまでに比べて当事者による資料提出が促され、財産分与の検討、算定が円滑に進むことが期待できます。

まとめと法律相談のポイント

 以上のとおり、離婚の際の財産分与について基本的事項と制度改正の内容について紹介してきました。
 財産分与は、夫婦が婚姻生活の中で築いた財産を公平に分配するためのものです。離婚により夫婦間の扶養義務はなくなるため、その後の生活、将来設計を考える上で財産分与はとても重要です。請求する側にとって正当な財産分与を受け取ることが重要であることはいうまでもありませんが、請求される側にとっても過大な分与を強いられることのないよう慎重に検討することが大切です。
 そのためには、財産分与に関する十分な知識と準備が必要です。
 今回、適切な財産分与を行えるよう民法や関係法令の改正が行われましたが、その恩恵を受けるためには専門家である弁護士に相談し、必要となる準備やその後の進め方等について適切なアドバイスを受けることが重要です。
 弁護士に相談する際には、相手方にどのような財産がどのくらいあるのか大まかにでも把握しておくことが大切です。また、預金通帳や保険証券、不動産の登記記事項証明書等のコピーも確保しておくとよりよいでしょう。
 その他にも、それまでの経緯や離婚を考えるようになった理由、お子さんに関する情報や夫婦双方の収入の状況等を整理しておくとスムーズに話ができ効率よく相談できます。
 離婚、財産分与についてお悩みの方は当事務所へご相談下さい。

執筆者

稲垣洋之

広島本部/弁護士

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